連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

バックナンバー

 第15回  ラン 〜人と同じ心地よさを好む〜

可憐なピンクの花を咲かせるデンファレを、インテリアアートとして。

可憐なピンクの花を咲かせるデンファレを、インテリアアートとして。

胡蝶蘭、カトレア、シンビジウムなど、花の中でも他を寄せつけない美しさを持ち、気高く高貴な花「ラン」。その魅力の虜になり、いつの間にか何百種類ものランのコレクターになってしまったという話も聞かれます。

ランの魅力は、まずバリエーションの豊かさが挙げられます。熱帯の高山を中心に世界中に25,000種類も分布しています。25万種類あると言われる種子植物の、約1割を占めていることからも、いかに種類が豊富かを知ることができます。お菓子の香料に使われるバニラビーンズも、ラン科バニラ族で淡いグリーンのかわいらしい花をつける、つる性のランです。

日本の野山でも、多くの自生ランを見つけることができます。シュンラン、ネジバナ、サギソウ、エビネなど280種類あると言われ、洋ランとは違う清楚な美しさを持っています。

二つめの魅力は、美しい姿と甘い香りです。ランは6枚の花びらを持っていて、それぞれ位置によって形が異なります。一番特徴的なのが下の花びらで、唇弁(リップ)と言われ、フリルがついたり、鮮やかな色を持っています。私たちを楽しませてくれる、美しい花姿や香りも、実はランにとっては、虫を誘うための大事な戦略なのです。

ランは受粉のために虫を使う「虫媒花」です。花が咲いている時に、確実に虫に花粉を運んでもらうために進化してきました。強い香りで虫を誘い込んだり、メス蜂にそっくりな姿の花をつけ、オス蜂をおびき寄せ、花粉を運んでもらうようなランもあります。人々の心を虜にしてしまう魅惑的な美しさは、自分の種を残すために進化したもの、というとなんとなく理解できますね。

三つ目の魅力は、人に身近な存在であるところです。高価で育てにくい印象をもつランですが、実際は、「人が心地よいと感じる環境がランにもよい」と言われ、私たちの生活に心地よい環境作りを意識していれば、ランにも心地よく、また次も花を咲かせる品種が多くあります。

また、個性的なフォルムは、合わせる花器によってさらに美しいインテリアやオブジェのような存在になります。フレームにランをデザインした、 “オーキッドフレームアート”(写真)など、日比谷花壇のホームページでも様々なランの楽しみ方をご紹介しています。一緒に生活していると他の花とは違った愛着が生まれてくるでしょう。


 コラムニスト紹介

日比谷花壇 本社 シニアデザイナー 西澤真実子
フラワーギフトの制作に長期間携わり、ギフトシーンにおける多くのフラワーデザインを 経験。現在は、ギフト商品の部門で商品デザインのコアを担い、トップデザイナーのひと りに数えられている。シンプルかつ花材の繊細な色合いにこだわったデザインを得意とし、 女性的で透明感のある作風が特長。独特のロマンティックな演出が、多くのファンを魅了 してやまない。また最近では、書籍の表紙デザインやCDジャケットのフラワーデザインを 手掛けるなど、多岐にわたる分野で活動を続けている。