連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第42回  宗教と花  〜教義の象徴と結びついて〜

聖母マリアの象徴としてキリスト教と深い関わりをもつ白ユリ ト

聖母マリアの象徴としてキリスト教と深い関わりをもつ白ユリ

花々の「命」は新しい生命の誕生や再生の象徴として古来より利用されてきました。そしてそんなイメージを持つ花々は時代と共に世界中の宗教と密接に結びついていきます。

現在、三大宗教として、キリスト教、イスラム、仏教がありますが、そのどれにも花々は少なからず登場します。三大宗教といえども、それぞれの宗派や国によって違いはありますが、簡単に説明しましょう。

イスラムですと、バラです。白バラは創始者マホメットを、赤バラは絶対神アラーを象徴しているとされています。更に、イスラムではバラ水を神聖なものとして死者の体を清めるのに利用したりもします。

キリスト教では実に様々な花が登場します。中でも白ユリはキリスト教の花の代表として扱われています。ユリは、聖母マリアの象徴であることから「マリアの花」とよばれ、純潔や美徳のシンボルとされました。

宗教絵画、特に「受胎告知」などには必ずといってよいほど、白ユリが描かれています。17世紀にはローマ教皇がマリアの純潔を象徴するとして白ユリを必ず描くようにとの勅命を出すほどでした。

では仏教ではどのような花が登場するのでしょうか。仏像を思い出してみて下さい。ほとんどの仏像は蓮の花の上に乗っていらっしゃられます。さらに、その御手にも蓮をお持ちになられています。仏教において、これほどまでに蓮の花が使われるのは仏教の教義が蓮の花の咲き方に例えられるからと言われています。蓮の花の根というのは泥の中にあって、その泥の中から立ち上がり、綺麗な花を咲かせます。泥という名の煩悩の世界から「悟り」という名の花を咲かせるのです。

こうして見てくると、花は本当に宗教と強く結びついているのがわかります。きっとそれは、私達の身近にある花が宗教という名のとてつもなく大きな世界で、小さな光明をもたらしてくれるからなのかもしれません。


 コラムニスト紹介

鈴木健久
日比谷花壇 フューネラルプロデューサー
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。