連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第44回  供花  〜形式にとらわれず自由に〜

水の上にランの花を浮かべる、献花スタイル

水の上にランの花を浮かべる、献花スタイル

一年中お花を手に入れることのできる日本では、様々な場面でお花が使用されています。もちろん葬儀の場面でも頻繁にお花は使われています。

最近の葬儀では生花を使った花祭壇が多く見受けられますが、それ以前には供花が葬儀の花の主な役割でした。供花とは文字通りお供えするお花のことですが、その由来は仏堂などで仏様や菩薩様に荘厳(しょうごん)する供華(くげ)にあるといわれています。荘厳とは仏様や菩薩様のお飾りを指したり、仏堂や仏像などを飾ったりするということです。このような使われ方をする供華にたいして、供花とは、亡き人を偲び、その想いをお花に託したものとされています。

供花のスタイルは一般的なものですと、花篭や盛り花、花輪などがあります。その供花も最近では形式にとらわれないものが見られるようになりました。例えばフラワーボールと呼ばれる球形をしたものや、花祭壇の一部としてアレンジしたりすることです。

供花や花祭壇以外のお花の使われ方ですと、献花というものがあります。故人を偲んで花を手向けるという意味では、供花とそれほどかわるところはありません。強いて言うのならば、献花のほうが式典的と申しましょうか。

従来の葬儀は仏教形式や神式が圧倒的に多く、それぞれの式典的なものとして焼香や玉串(たまぐし)奉奠(ほうてん)がありました。それぞれの意味合いは異なりますが、式典的という意味では似たようなものと言えます。これに対して献花は無宗教葬や偲ぶ会などでよく使われます。宗教色を出さずとも式典的な雰囲気になります。

献花は白いお花、特に菊が多く使用されてきました。しかし、昨今では色付きのバラやカーネーション、その時々の季節のお花も利用されます。また、献花は切花を献花台と呼ばれるテーブルに置いていくのですが、かわったところですと、水を張ったアクリルの什器に一人ひとり花を浮かべていくというような献花のスタイルもあります。

現代では、供花にしても献花にしても、既存のやり方にとらわれず、自由な発想で個性を出したスタイルが求められているようです。


 コラムニスト紹介

鈴木健久
日比谷花壇 フューネラルプロデューサー
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。