連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第46回  無宗教葬  〜故人への思いを込めて〜

おしゃれだった故人を偲んで、白とグリーンの花々を祭壇にアレンジ

おしゃれだった故人を偲んで、白とグリーンの花々を祭壇にアレンジ

近年の葬儀シーンでは、よく無宗教葬という言葉を耳にします。これは葬儀をある特定の宗教儀礼で執り行わずに故人を送る葬儀のことです。

無宗教葬はスタイルを選ばない自由な葬儀形式ですが、その分仏教形式や神道形式のように決まった葬儀の式次第というものがありません。そしてこのような葬儀は、親族のみの場合や、本当に親しかった友人数名などの少人数で営まれる家族葬に多く見受けられます。 また、式自体に決まった形式がありませんから、葬儀式場の飾りつけもやはり自由にアレンジできます。その最も顕著なものとしては祭壇でしょうか。無宗教形式で圧倒的に多い祭壇というと花祭壇ですが、大切な人の最後を綺麗な花々で飾り、送ってあげたいと思うのはなるほど、無理からぬことだと思います。

無宗教葬の花祭壇はとても特徴的です。残された遺族が故人の人柄や趣味を花祭壇で表現しようとされたり、故人の大好きだった花や季節の花々を使った祭壇を望まれたりするからです。日比谷花壇の葬儀サービスのHPでも花祭壇の実例を写真でご覧いただくことができます。

無宗教葬では祭壇以外でもたくさんの花々を使ってシーンを彩ります。代表的なところですと、献花がありますし、棺の蓋の上に花束やフラワーアレンジメントを乗せたりもします。一部の宗教では棺の蓋の上に花や物を置くのはタブーとされていたりもしますから、そのことを鑑みただけでも無宗教葬の自由さが窺えますね。他にも遺影写真の額に花を添えたり、一輪挿しにした小花を受付やちょっとしたスペースにあしらったりなどというように、いたるところに花々は飾られます。

無宗教葬というとなんだか宗教を蔑ろにした感がありますが、決してそういうことではありません。むしろ残された方々が故人のことを想い、故人に対する感謝や愛情をそれぞれが思い描く形で精一杯表現することのできるとても温かみのある人間的な送り方なのです。


 コラムニスト紹介

鈴木健久
日比谷花壇 フューネラルプロデューサー
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。