連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第55回  ウェルカムボード 〜花で新郎新婦の思い込め〜  

ブルースターやデルフィニウムといったブルーの花でデザインしたウエディングブーケ

大切なお客様をお迎えするための、ウェルカムボードフラワー

恵みの雨の中、色とりどりの紫陽花が咲き誇る季節となりました。
紫陽花の学名は「ハイドランジア」。ギリシャ語のhydro(水)とangeion(容器)の合成語であり、多量の水を吸収するためとも、果実の形が水がめに似ているためとも言われています。紫陽花の原産は日本ですが、十八世紀ヨーロッパにもたらされた際にはその美しさ故に「東洋のバラ」と称賛されたそうです。日本人にとって馴染み深く、独特な雰囲気を持ち合わせている紫陽花はウエディングでも様々なシーンを彩ります。

結婚式を華やかに演出するお花として一番に思い浮かぶアイテムはどんなものでしょうか。一番代表的な物としては「ブーケ」が挙げられますが、その他にも数多くのアイテムがあります。 最近では、結婚式を行うにあたり、大切なお客様をどのようにおもてなしするか、そしていかに二人らしいエッセンスを取り入れ表現するか、という観点で考えるご新郎様・ご新婦様が増えているように感じます。またそれがウエディングフラワーにも上手に取り入れられています。その一つが結婚式の際に受付や会場の前にセッティングするウェルカムボードフラワーです。

お招きしたゲストの方が分かりやすいようにと御両家名を書いたいわゆる「案内板」が、今では「Welcome」と綴った文字が添えられ、お花を飾り、デザインも可愛いものからシンプルでモダンなもの、さらには気持ちを込めて手作りしたものなどに、その形を変えています。お花は通常統一感を持たせる為、披露宴会場とお揃いでご用意することが多いのですが、サプライズでそのアイテムだけ全く違う色やお花にしたいと言うご要望や、中にはそこだけはご新郎様のご意見を、と言うことでご新郎様の好きなお花「ひまわり」をあしらったことも。

さりげない小さなアイテムにも一つ一つにたくさんの想いが込められており、その中にはお二人だけのエピソードが隠れているかも知れません。そんなお花とともに記念写真を撮られているゲストの方々の姿に出会った時には、何ともとても嬉しい気持ちになります。


 コラムニスト紹介

杉本郁弥
日比谷花壇 ウエディングフラワーコーディネーター 食空間コーディネーター
都内ホテルにて、ウェディングブーケのデザイン・空間装飾&テーブルコーディネートを担当。また、ホテル婚礼パンフレットの制作に携わる。10年間で1,000組を超えるお客様のウェディングフラワーをコーディネートする。