連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第65回  松 〜お正月を彩る縁起物〜  

若松に、3種のランを合わせたお正月用のアレンジメント

若松に、3種のランを合わせたお正月用のアレンジメント

クリスマスが終わり、街中では新しい年を迎えるためにお正月のお飾りやおせちなど、正月を感じさせてくれるものが一年の終わりにたくさん出回ります。生花店も同じで、クリスマスが終わったとたんに、松・千両・南天・水仙・梅など昔からお正月花として親しまれてきたお花が店頭を彩ります。

お正月自体が別名『松の節句』と言われている通り、正月祝いには松は欠かせない素材です。正月に飾るお花も、松を入れることで十分お正月らしさを演出してくれますし、松や千両などの保ちの良い素材は、長期間沢山の人を出迎えるのにもむいています。

よく年末年始に家の門に飾られている松は『門松』と呼ばれています。若松と竹で作られていますが、なぜ門松を飾るのかというと一年の幸福を授けてくれる『歳神さま』が家に降り立つための目印として昔から飾られ始めたのだと言われています。松は『待つ』にも
繋がり、竹は冬でも色濃くまっすぐに伸びる節があることから、けじめの意味が込められています。最近では、『若松』だけを飾る家が増えています。

松はたくさんの種類があり、代表的なものに、『若松』『大王松』『蛇の目松』『五葉松』などがあります。『大王松』は葉が長く1本でもボリュームがあるので、大きな花瓶などに活けるとダイナミックなデザインになります。また、『蛇の目松』は蛇の目傘のような枝振りで、中心が黄緑色のめずらしい色付松です。大振りなものが多いので、大輪のお花との相性が良いです。『五葉松』は枝先が5つの束に分かれて付いている葉の短い松です。

同じ松でも種類は豊富で、それぞれ特色を持っています。どこに飾るのか、何の花を合わせるのか、希望を生花店の店頭で伝えてみてください。シーンに合わせたお花選びを提案してもらうことができます。

昨年とは一味違うお正月アレンジメントをご家庭に飾っていただき、新年を迎えてみてはいかがでしょうか。

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 小野瀬 景

 コラムニスト紹介

小野瀬 景
生花マーチャンダイジングディレクター
店頭販売での長年の経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングディレクターとして、お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開、お客様と生産者を結ぶフェア展開を手掛ける。