連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第69回 ラナンキュラス 〜季節感演出にピッタリ〜

桜 〜鉢植えなどで春を先取り〜

旬のラナンキュラスとグリーンでデザインした爽やかなアレンジメント

「ラナンキュラスは花が開いているから違う花にして欲しい。」 この時期店頭でお花を販売していると、そんな声をお客様からよく聞きます。私も花屋になる前は、お花が開いていると1週間ももたないと思っていました。

しかし、そのイメージを払拭させてくれたのが長野県フラワースピリットの「ラナンキュラス」です。フラワースピリットは、長野県松本市を中心に、安曇野市から茅野市に至る17名で構成される花の生産者集団で、ここで生産される「大輪ラナンキュラス」は一輪のボリューム感や美しさが抜群です。今までに抱いていたラナンキュラスのイメージを変え、新たな希少価値を創出している生産地です。

またフラワースピリットで生産されるラナンキュラスは蕾が開いてきたら摘み取るのではく、根が張っている内に蕾んだり開花したりを繰り返し、花の開花が7割位になるまで待つそうです。冬の寒い間、じっくり育てることで養分をたくさん蓄えたラナンキュラスに育つそうです。お花が開いてから出荷する方が長持ちするなんて不思議です。

店頭で購入したラナンキュラスは1週間と言わず、さらに長くもちます。そのため、長持ちする春の枝物や葉物と合わせてアレンジすると、ラナンキュラスの表情の変化をきれいな状態で楽しむことができます。 ラナンキュラスは1年通して冬から春にかけてしか出合えない期間限定、「旬」のある花です。季節感を演出したい贈り物をする場合や春の素材との相性を考えると大変お薦めです。

最近では食品も旬が分かりにくいものですが、1年中出ていても旬の時期が1番美味しいですし、身体にも良い作用があるなど聞きます。 お花も同じように、旬があります。最近では輸入花も多く、品質も向上していて1年中お花を楽しむことが出来ますが、ラナンキュラスは、1年に1シーズンの花です。そう思うと、今年もラナンキュラスに出合えたことが嬉しくなります。 旬のこれ以上ない美しさと、生命力を備えたラナンキュラスを、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 小野瀬 景

 コラムニスト紹介

小野瀬 景
生花マーチャンダイジングディレクター
店頭販売での長年の経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングディレクターとして、お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開、お客様と生産者を結ぶフェア展開を手掛ける。