連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第71回 バラ 〜場所に合った品種を選ぶ〜

初めての方でも育てやすいミニバラ

初めての方でも育てやすいミニバラ

フラワーショップで常に人気の上位ランクに位置する花といえば、バラでしょう。
ヨーロッパでの育種や栽培が盛んな印象がありますが、実はチベット周辺や中国からミャンマーにかけてのエリアが、現在の華やかなバラのもととなった野生種の主産地です。ここから中近東やヨーロッパへ広がり、今では世界中で最も愛好家の多い花の一つとして人々を魅了しています。

近年、よく目にするアロマグッズに使用されているローズオイルやローズウォーターは、ダマスクローズの花弁から抽出されるものです。この香りは、抗菌作用や鎮静作用、アンチエイジング効果も高いと言われています。ただバラの香りと一言に言っても大きく分けて7種類もあります。良質のローズオイルを自分で抽出するために好きな香りのバラを庭で育てている方も多いです。エジプトのクレオパトラやナポレオンの皇妃ジョゼフィーヌはバラの愛好家として有名で、この濃厚で甘い香りのダマスクローズに夢中だったことも頷けます。                

かつてジョゼフィーヌは日本や中国など世界中から原種に近いバラを取り寄せ、マルメゾン城のあらゆるところに植栽していました。彼女の造ったバラ園でその後、品種改良が盛んに行われ、今世界中で人々を魅了している華やかなバラの基礎となっているものが多々あります。

“バラを育てるのは難しいですよね”とお客様から聴かれることが多いのですが、初めて育てる方にはミニバラをお薦めしています。鉢植えでも失敗しにくく、害虫も比較的つきにくいです。ミニバラには四季咲きと言って年に数回小さく可愛い花をたくさん咲かせる品種があるので、店舗で尋ねてみてください。

また品種によって日光が大好きなものや少し控えめな日射がよいなど、適する栽培環境が違うので、庭のどこで育てたいのか、場所に合った品種を選ぶことが大切です。どの品種にも共通しているのは肥料食いという点です。基本的には花の咲いていない成長期には常に肥料が必要です。あれだけきれいな花を咲かせるためには仕方ないかもしれないですね。         

これからの4月、日本では春バラがとてもきれいに咲き誇ります。私たち日比谷花壇の店頭でも切花、鉢植えともに多種のバラが目を楽しませてくれています。

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 谷 真由美

 コラムニスト紹介

谷 真由美
生花マーチャンダイジングディレクター 谷 真由美
店頭販売での長年の経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗を統括する鉢物マーチャンダイジングディレクターとして活躍。花鉢や観葉植物の魅力を熟知し、お客様が求める、お客様に発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。