季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

バックナンバー

第85回 バラ 〜生産者の努力で高品質に〜

人気の「クオーターロゼット咲き」のバラ

人気の「クオーターロゼット咲き」のバラ

万人に愛され、お誕生日や記念日、結婚式など、さまざまな用途に多用されるバラは、フラワーショップで欠かせない存在です。バラは、そのほとんどが鑑賞用として栽培されることがほとんどで、切り花用、ガーデンローズ用とに分けられ、品種改良が進められてきました。

その結果、一口にバラといっても色や咲き方にはたくさんの種類があります。“剣弁咲き” “クオーターロゼット咲き”“平咲き”、“八重咲き”、“カップ咲き”、“ロゼット咲き”などさまざまです。

変わらず人気な咲き方は“剣弁咲き”。花びらの先が剣先の様ということから鋭い名がついていますが、実物は繊細な花びらが開花とともに柔らかくくるまる様子がとても優しい印象の咲き方です。

次いで最近人気のあるのは“クオーターロゼット咲き”です。無数に重なる花びらの中心からは今にも香りがあふれ出しそうな咲き姿。その可愛らしい形は結婚式などに多く用いられますが、茎や花びらがとてもデリケートであるため、作りにくく希少価値が高いものとなっています。

かつては寒暖の差が激しい日本ではバラの栽培は難しいとされてきましたが、今や全国各地で盛んに行われています。山形県の北東部に位置する熊谷園芸さんは一年中安定した出荷を誇り、また香り豊かな品種を多く栽培しています。バラの栽培には十分な日照と25℃〜28℃の温度が必要ということで、日本初最新鋭の高圧ナトリウムランプを使用したハウス栽培をはじめました。また、くわえて二酸化炭素を発生させる炭酸ガス発生装置を設置し光合成を活発化させ、収量増加や品質向上をさせるなど多くの工夫を凝らし、高品質のバラを出荷しています。

バラには病害虫がつきものです。病害虫予防のために、科学農薬が用いられていましたが環境への配慮のために、徐々にではありますが、天敵昆虫薬剤(害虫を捕食する、植物に影響のない虫)や、微生物農薬(病原菌を捕食して媒介する菌)を使用しています。

このように、生産者さんが、栽培に不向きな気候や害虫に対して工夫と努力をしてきたおかげで、フラワーショップから各家庭へ一際華やかに咲いたバラが届くようになりました。同じ咲き方のバラでも、よく観察すると人間同様一人一人個性ある魅力的な姿をしています。是非お近くのフラワーショップへ足を運びあなた好みのバラを探してみてはいかがですか。

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川 藍生

 コラムニスト紹介

長谷川 藍生
日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川 藍生
店頭での経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングを担当。お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。