連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第47回  リビング葬  〜好きだった春色で送る〜

チューリップやスイトピーなどで飾った祭壇

チューリップやスイトピーなどで飾った祭壇

新しい年を迎えてしばらくすると、街の花屋さんは色とりどりの花たちで溢れ返ります。
チューリップやスイトピー、フリージアにラナンキュラスなど、香り高く色鮮やかな春の花達が待っていましたとばかりに店先に並び始めるのです。
そんな明るい春の花々ですが、贈り物や自宅のテーブルに飾られるだけではありません。
実は葬儀でも利用されているのです。

私たち日比谷花壇もそのような明るい春の花々を使った花祭壇をお作りさせていただいたことがあります。その時の様子を少しご紹介いたします。

故人は初老の女性の方でした。まだまだこれから人生を楽しまれてもおかしくないはずでしたが・・・その体は病に冒されていました。病気が判明したときには時既に遅く、その生を全うできずにご逝去なされました。
私たちは残されたご主人様やお子様方と何度もお話をさせていただき、故人が大好きだった花を使い、ご自宅であるマンションのリビングを使用して送らせていただくことになりました。

故人はチューリップがお好きで、パステルカラーのピンクがお好きなとても可愛らしい感じの女性とのことでした。時は一月、ちょうど春の花々が店先に並ぶ頃です。故人の大好きだったパステルピンクのチューリップももちろん手に入ります。そのほかにはスイトピー、バラ、ブプレリュウム等を使い祭壇をお作りいたしました。明るく可愛らしい花祭壇に仕上がったと思います。マンションのリビングという限られたスペースの中で、少しでも故人のイメージを表現できるようにとデザイナーと打ち合わせをし、イメージを膨らませていきました。その結果はご主人様をはじめとした皆様にご満足いただけるものとなりました。故人も喜んでいただけたのではないでしょうか。

故人の送り方は様々です。ただひとつ共通していることは、残された方々に深い悲しみを残していくということです。私たちは花々を通してその悲しみを少しでも癒すことできればと願います。

 コラムニスト紹介

鈴木健久
日比谷花壇 フューネラルプロデューサー
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。