連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第63回  ポインセチア 〜赤い星形、Xマスに定着〜  

色鮮やかなポインセチア(「ヒビヤカダン スタイル アトレ恵比寿店」で)

色鮮やかなポインセチア(「ヒビヤカダン スタイル アトレ恵比寿店」で)

町中がたくさんのツリーやイルミネーションに彩られて賑わいを見せるこの時期、花屋さんの店頭には、真っ赤なポインセチアが並びます。 クリスマスに飾られているのだから、寒いのが好きだと思う方も多いと思いますが、メキシコが原産地です。日差しが降り注ぐリゾートのような気候が大好きで、冬の厳しい寒さが苦手な植物です。栽培農家は、温室でポインセチアを栽培します。それなのになぜポインセチアは、寒い時期に世界中で飾られるようになったのでしょうか。諸説ありますが、それはキリスト教と関係しています。

原産地であるメキシコのタスコ地方は、メキシコの中でも南に位置しており、野生のポインセチアも12月に赤く色づきます。クリスマスの時期に色づく植物の中でも、星型に色づくポインセチアをキリスト誕生の時に輝いた「ベツレヘムの星」に似せてクリスマスに飾っていたそうです。その後19世紀、米国駐メキシコ大使であったポインセット氏がメキシコで自生していたポインセチアを気に入り、アメリカで園芸化されたのがきっかけで世界に広まりました。また、ヨーロッパではクリスマスにキリストの血の色である赤い物を飾る習慣があり、真っ赤に色づくポインセチアが好まれ、また赤を引き立たせる美しい葉の緑が、厳しい冬を向かえたヨーロッパの農作物の成長を願うものとして飾られたといいます。

ポインセチアといえば「赤い花」ですが、赤く色づく部分は実は花ではありません。それは「苞(ほう)」で、実際の花は真っ赤な苞の中心にある、控えめに咲く黄色い小さな部分です。そのためクリスマスが終わり、黄色い花が枯れてしまっても、その後も長い間鮮やかな色合いを楽しむことが出来ます。また、最近では赤以外の色の品種も増えてきました。日本ではポインセチアの飾られる理由を知らない方が多いように、赤の色にこだわる人が少ないようで、最近はピンクや黄色の品種や、青や紫の染料を吹きかけたもの、ラメが付いたものも人気があります。
農家の出荷は11月中にピークを迎えます。今年のクリスマスのデコレーションに、色鮮やかなポインセチアを加えてみませんか?

 コラムニスト紹介

三富裕子(みとみゆうこ)
鉢物マーチャンダイジングディレクター 三富裕子(みとみゆうこ)
ショップでの鉢物マーチャンダイジングの経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗を統括する鉢物マーチャンダイジングディレクターとして、お客様が求める、また新たな発見や感動を提供する商品/ディスプレイ展開を手掛ける。